フジサンケイビジネスアイ 2018年2月19日(月)掲載

【エコスタイルのエコBiz】エネルギーシェア 究極の仕組み

電気が仮想通貨になる

電気の取引は契約上の商流と現物の商流が一致しておらず、契約上電気を販売しているのは小売電気事業者だが、実際に電気の現物を扱っているのは送配電事業者だ。また電気は“瞬間消費性”という特性から流通における取引の基本は先渡取引となる。実際の取引ルールは、翌日に使う電気を予約し、その電気の送電を一般送配電事業者に委託(託送)する。リアルタイムでは予約した計画に従って現物の受け渡しが行われるが、予定通りにいかなかった部分(インバランス)を、送電線を経由した電気の流通を管理している一般送配電事業者と小売電気事業者の間で事後精算を行うという仕組みだ。

必ず生じる需給差

インバランスは金融取引で言う「フェイル」と同じだ。金融取引であればフェイルはイレギュラーな取引だが、電気の場合は必ずと言っていいほど取引商品ごとにフェイルが発生するので、託送契約にフェイル精算の条件があらかじめ統一したルールとして織り込まれている。

実際に小売電気事業者は、消費者が30分ごとにどれぐらいの量の電気を使うかを予測して計画を立て、それに従って供給に必要な電気を予約している。一方で、消費者はその計画など気にすることなく電気を使うので計画通りにいかない。また自然エネルギー電源の発電は不安定なため、小売電気事業者にとって需要と発電の予測は非常に重要な技術となる。

さらに電気の取引に慣れていない人が分かりにくいと感じるのは、リアルタイムでは発電と小売りと消費が同時に一気通貫で起こるからだ。このような電気取引のバーチャルな特性から、現在世界を席巻している仮想通貨の重要な技術であるブロックチェーンを応用することで電気を仮想通貨のように売買できるのではないかと考えている。

つまりマイニング(採掘)により所有を明らかにすれば、電気を使用する権利を自由に何度でも売買することができる。

電気を仮想売買する仕組みが社会に浸透することによる最大のメリットは、電気を必要とする需要家に必要な量の電気を効率的に届けることができることで、それ自体が電気を効率的に利用する仕組みになる。現在の電気事業者と消費者という縦の関係に、消費者同士の横のつながりを加えるという究極のエネルギーシェアリングの仕組みといえる。

デジタル化がカギ

具体的には、昨今運用が開始されたネガワット取引も仮想売買ができればもっと効率的に、しかもフレキシブルに行うことができるようになるであろう。結果的にエネルギー消費をコントロールする省エネの手段や効率の良い分散電源を自ら保有するインセンティブが高まることになる。

価格面では、ある瞬間の電気の価値評価は必然的にその瞬間の需要と供給のバランスによって決定し、理論価格を算出することが難しい電気のフェアバリューが最適に決まることにもつながる。

また電気は2次エネルギーであり、いろいろな燃料から電気を生産しているが、電気のフェアバリューが明確に決まることで、再生可能エネルギーの価値や関連する天然資源の価格も決定。電気の価値がエネルギーに関連する燃料などの価値基準になることも想定される。

一方で、現在の電力業界はアナログな業界であり、スマートメーターの普及が完了しておらず、仮想売買の実現にはデジタル化と分散電源の普及がカギとなる。
(中島健吾 取締役電力事業部長)

プロフィル:中島健吾

なかしま・けんご 1991年横浜市立大商卒。外資系証券会社や信託銀行などを経て、2015年エコスタイルに入社し、取締役。48歳。島根県出身。

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